君のための策略



「ん?んー……」

  気持ち良く眠っていた。
  久しぶりに落ち着いて眠れたのだが。

「………?」

  やけに温かい。
  まるで、何かあるような温かさだ。

「ん?」

  さすがにおかしいと思い、目をあけると。

「……………何だ。起きたのか」
「………………」

  太公望が目の前に、何故か裸でいた。

「………………」

  状況がわからず、は大混乱だ。
  太公望が何故裸なのか。
  何故、一緒に眠っているのか。
  もう一つ、気付く。
  太公望は自分に腕枕をしていた。

「た、太公望……な、何故ここに」
「?何をいう。昨日あれだけ私を誘っておいて」
「誘っておいて!?」

  聞き捨てならない。
  は跳び起きた。

「な、何を。私がお前を!?」
「ああ。酒を飲み、私にずっとまとわりついていた」
「……………」

  そう。酒を飲んだ記憶はある。
  だがそれは張飛っ飲んでいたのだ。
  その場に太公望はいなかったような気がする。

「まさか、お前があんなに私を……」
「な、な………」
「……いや。不粋だな。こんな話をするのは」
「!!あ、いいから言え!何があったか詳しく言え!」

  は太公望を問い詰めようとする。
  昨日、彼と何があったのか気になって仕方がない。
  まさか………。

「ん?そんなに気になるのか?」
「あ、当たり前だ!!何だ!!もったいぶって!」
「たいしたことない。それより腹が減ったな。何か……」
「っ……!し、食事を用意してくる!!それまでに全部整理しておけ!」

  は食事の用意のため、出ていく。
  頭の中は昨日の夜のことでいっぱい。
  太公望と一体何があったというのか。

  彼のことだから、からかっている可能性もある。

  ばたばた食事を用意し帰ってくると、太公望は何かしていた。

「な、何をしている」
「ああ。後処理をな」
「そ、それで……私は昨日何を」
「待て。食事をしてからだ。慌てずとも、私はどこにもいかぬ」
「そ、そういう問題では!」
「ん?」

  ここで機嫌を損ねては意味がない。
  太公望の食事が終わるまでまつことにしたが。

「のどが渇いたな」
「…………」

  くぅぅぅぅ!!

  悔しいが逆らえない。
  茶を運んで来た。

「ほ、ほら」
「……………」
「ん?」
「昨日は何故あんなに積極的だった」
「だ、だから覚えていない」
「酷いものだな。私をあれだけ寝かせないで」
「……………」

  ね、寝かせないで!?記憶がない私は何を。

「だがあんなお前を下から眺めるのも悪くない」
「う……う……」
「どうした?」
「何だか精神的に追いやられて……」

  あああ……わ、私は……。

「よかったぞ」
「……………」

  何がいいのかわからない。

「あっ……あぁぁぁぁ……。私は……な、な……何をしていた」
「中々いい味だ」

  太公望は食事をおえ、茶を飲んだ。
  はじっと太公望を睨んだ。

「何だ?」
「結局、私はお前に何をしていたのだ……っ」
「………ん?お前は酒を飲んで、私にすりよっていた」
「それは聞いた」
「……そして、私が帰ろうとしたら部屋にひっぱりこんで」
「え……っ……」

  部屋に!?

「そして服をはぎとったのだ」

  太公望は鞭をいじりだす。

「服を!?」
「………何か甘いものが……」
「ほら、桃マン」
「用意がいいな」
「いうと思っていたからな」

  先によういしていた桃マンを渡した。
  太公望はそれにかみつく。

「………で?」
「私の上にのり。ずっと肩をもんでいたわけだ」
「………はい?」
「ふ……何を期待していた?」

  太公望は失笑するようにを見た。
  は固まってしまう。
 わざとまぎらわしい言い方をしていたのだ。

「なっ!!おま、えは!」
「まさか、この私がお前と情交するわけがないだろう」
「なっ!!」
「そうなれば、私だってお前を縛りあげて抵抗する」

  太公望はさっさと桃マンを食べてしまう。

「……………」
「……だが、あんなにすりより、私にねだるお前も新鮮だった」
「………………」
「??」
「私のほうがお前となど嫌だ!!ああ!!寒気がする!!」
「……………」
「得体の知れない導師に触れてしまった。
  !!な、何か病気になってないだろうな!!」
「貴様、私に喧嘩を」
「ふ……太公望などと……。あまりにも下手すぎて、酔いがさめてしまうわ。
酔いが回っていても、相手は選ぶ」

  は太公望を見て笑った。
  さすがに頭にきて、挑発してしまう。
  あれだけからかわれたのだから、仕方ない。

「私が下手などと、何故わかる」
「その性格では、女性も相手にしないだろうからな!」
「いいだろう。この私の手ほどきをみるがいい!」
「!」

  太公望はいきなりの服に鞭を引っ掛けた。

「私の戦に敗北はないのだよ。……」

  そういって笑うと寝台に投げ飛ばされる。
  太公望はそのままに飛び掛かるのだった。

  力ではが勝つかもしれない。
  だが技術では太公望が勝るだろう。

  けれどそれは戦でのこと………。
  これから始まる戦では?





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