心も体も欲しい私




「ふふ。陸遜………素敵……。私、貴方のこと前から好きだったの……」
「………」

  は体をすりよせ、陸遜にもたれ掛かる。
  ふとももに手をやり、撫でていく。そのまま指を滑らせ……。

「!?あっ……なっ!!!!」
「知ってるのよ?貴方が毎日、私のこと見てたの。湯浴みの時もこっそり覗いていたでしょ?」

  は妖艶に笑い、服の間から手を忍ばせる。

「!!私は………貴方が危険な……」
「私も貴方が大好きなのよ。知ってた……?」
「そん、な……。私だけの……」

  ああ、。

  陸遜の頭の中は想い人でいっぱいだ。
  唇が重なる。

「ねぇ……陸遜?」
「は、い………」
「……………」
「え?」

  は耳元で何か囁く。
  陸遜はその言葉に目をみひらいた。

「……?」
「ね?陸遜……」
「私でいいんですか?………」
「ええ。いいのよ。ふふ……」

  私は………!私は!!………!



「あらあら、有能な呉の軍師もこの程度なのね……。はぁ、意外にあっさりいっちゃった」

  妲己はつまらなさそうに陸遜を見下ろす。

「まぁ、いい夢の中でそのままさよなら。もありじゃない?」
「貴様!!陸遜に何をした!!」

  は妲己を睨み、ほえる。
 その手には拘束具がついている。

「ふふ。私はいい夢を見せてるだけよ」
「くっ!」

  陸遜……!目を覚ませ!

  いきなり現れた妲己。
  その妲己に一睨みされ、陸遜は倒れ込んだのだ。
  は戦おうとしたが、陸遜が盾にされている。
  手がだせなかった。

「陸遜!!」
「無駄、無駄。所詮人間には術はやぶれないわ。
  どんないい夢見てるのかしら?こんなに……」
「!陸遜に触るな!!」
「あら、妬いてるの?でも貴方のじゃないみたい」
「大切な仲間に」
「あー、そういうのは嫌い。うざいわ」

  妲己は陸遜の腹を蹴る。

「ほら……こんなことしても起きない」
「っ………」
「そういう顔、だーいすき。憎んでる顔」

  妲己は馬鹿にしたようにを見た。
  そのまま陸遜の腹を踏み付ける。

「このまま遠呂智様の駒に………」
「いい夢見すぎたー!!!」
「!!!!」

  陸遜はいきなり跳び起きた。
  妲己はバランスを崩し、ひっくりこけてしまう。

「は……はぁ……はぁ……。くっ……何と言う……」
「陸遜!!」

  陸遜は声のしたほうを見る。
  そこには愛しい人の縛られた姿が。

「!!!妲己!!許しませんよ!!」

  双剣をとり、妲己を睨んだ。やっと夢から覚めたらしい。

「どんな甘い夢も所詮は夢………。
  があんなに素直になるわけがない!!
  は気がきなくて、がさで、湯浴みを覗いていようが気付かない人だ!」
「…………覗いていたのか……」
「それにあんなに可愛く私に……」

  陸遜は言いかけて赤くなった。

「ま、まぁ、それはいいとして」
「!!な、何だ!?お前!!何を!!」
「付け込む場所を間違えましたね」

  陸遜は余裕の表情。だが。

「いたーい。っ!!何よ!!私、全部わかってるのよ!!貴方が見てた夢!!」
「え………」
「貴方、あの子に平気であんなことさせるのね」
「!」

  目を見開く。
  まさか、本当にばれている。
  術を使ったのは妲己だ。夢を覗くのも簡単なことかもしれない。

「あんなことにそんな事。あらー、口じゃいえなーい!」
「ま、また惑わす気ですか?その手には」
「手が震えているぞ。陸遜」

  確かに微妙にふるえている。汗もかいている。

「わ、わた、私は……そんな……」
「動揺しすぎだろう」
「だって本当のことだから。ばれたくないわよねぇ?彼女に無理矢理」
「黙れ」

  は陸遜の前にたつ。

「陸遜を惑わすな。陸遜が何であろうと私は構わない」
「………」
「陸遜は大切な人だ。何が何だかわからないが、信じている」

  陸遜はただはだ感動する。
  逆に妲己はげんなりだ。

「あー、あー、はいはい。やだやだ。そういうの!」
「!!」

  妲己は攻撃を仕掛けてくる。
  はそれを避ける。
  拘束が解けた。

「!!なっ!!」
「甘いな!」

  隠し持っていた短刀を妲己へ投げ付けた。

「っ!!」

  それは妲己の顔をかすめた。

「………へー、やるじゃない。貴方を潰すの楽しみになってきた」
「!待て!!」
「次は盛大に迎えてあげるわ!!次はぼこぼこにするんだからね」

  妲己は笑いながら消えていく。

「っ……逃がしたか!」
「………」
「……何ともないか?術にかけられて……」
「ー!!」
「!!」

  陸遜は勢いよくに抱き着く。
  そのまま二人は地面に転がる。

「な、んだ……」
「うれしいです。私の本性を知っても……その……大切だと言ってくれる……」
「それは………仲間……だからな……。お前も術にかけられていたわけだし」
「……………」

  ああ、これでこそ!!

「……だが、何の夢を見ていたのかは知りたいな」
「…………え……」
「どうせ、ろくでもない夢だろう?私をこき使っていたような」

 笑う。
  だが彼女の予想とは違い、陸遜は夢の内容を言えずにいた。
  言える訳がなかった。

 いってしまえば、間違いなく彼女にぼこぼこにされてしまうだろうから。






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